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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

すでに自分は、勝っているのだ。彼の杖の技倆もわかっている。改めてなお勝つ要はさらにない。

のみならず、あの一敗を口惜しがって、母子してここまで自分の後を慕って来たところを見ると、愈、負けずぎらいな母子の恨みの程が怖ろしい。吉岡一門を敵とした例を見ても、怨みののこるような試合はすべきでない。益は少なくて、まちがえば、天命を縮めてしまう。

それにまた、武蔵は、子を盲愛するの余り人を呪う無知な老母の恐ろしさは、身にも骨にも沁みて、一日一度は必ず思い出すほどだった。

あの又八の母親――お杉ばばの影を。

何を好んで、また人の子の母から、呪いを買おう。どう考えても、これは逃げるの一手、ほかに当り障りなく通る道はなさそうに思われる。

で、彼は無言のまま、半ばまで降りて来た岩山を、またふたたび上へ向って、のそのそと登りかけた。

「――あっ、お武家」

その背へ、下からこう呼んだのは、気の荒い息子の方ではなく、今、牛の背を降りて地上に立った老母の方であった。

「…………」

声の力にひかれて、武蔵は足もとを振りかえってみた。

見ると、老母は、岩山の根の辺りに坐って、じっと自分を見上げている。