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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

赤い陽が沈みきれば、こよいも大きな月がのぼるであろう。満地は虫の音に耳もしびれるばかりだった。彼一人の静かな跫音にさえ愕いて、虫は武蔵の袴や刀のつかにも飛びついてくる。

自分に風流があるならば、この行き暮れた道をも楽しんで歩くことが出来ように――とは思うのであったが、武蔵は、

(汝、楽しむや)

と、自分へ訊ねて、

(否)

と、自分で答えるしかない気持であった。

――人が恋しい。

――食物がほしい。

――孤独に倦みかけた。

――修行に肉体がつかれかけている。

と正直に思う。

元より、これでいいとしている彼ではない。苦い反省を抱きつつ歩いているのだ。――木曾、中山道から江戸へと志して、その江戸にはいること僅か数日で、再び陸奥の旅へ去った彼であった。

ちょうどあれから一年半余――武蔵は先に逗留し残した江戸へこれから出るつもりなのである。

なぜ、江戸を後にして、陸奥へいそいだか。それは諏訪の宿で会った仙台家の家士石母田外記の後を追ったのであった。自分の知らぬまに、旅包みの中にあった大金を、外記の手へ返すためであった。あの物質の恩恵を受けておくのは、彼にとって、大きな心の負担であった。