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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

と、いう。

「徳願寺とは?」

と聞くと、この法典ヶ原から一里余り先の寺で、いつも彼の亡父が、

(おれの亡き後、独りで困った時は、この巾着の中にある砂金を少しずつ費え)

といわれていたのを思い出し、常に、肌身に持っていたその巾着を預けて、寺の庫裡から借りて来たのだ――と、伊織はしたり顔に答える。

「では遺物ではないか」

と武蔵がいうと、

「そうだ、古い家は焼いちゃったから、お父さんの遺物は、あれと、この刀しかない」

と、腰の野差刀を撫でる。

その野差刀も、武蔵は一見したことがあるが、生れからの野差刀ではない。無銘とはいえ、名刀の部に入ってよい品である。

思うに、この子の亡父が遺物として、肌身に持たせておいた巾着にも、少しの砂金ばかりでなく、何か由緒ある物ではなかろうか――それを食物の値に、巾着ぐるみ預けて来たのは、やはり子どもらしいが――また、可憐らしい、と武蔵は思った。

「親の遺物など、滅多に、人に渡すものではない。いずれわしが、徳願寺へ行って、貰い返してやるが、以後は、手離すではないぞ」

「はい」

「ゆうべは、その寺に、泊めてもらったのか」

「和尚さんが、夜が明けてから帰れといいましたから」