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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
定房の老いの眼に涙をみたので、つい、誘われていたのであった。
「よう、諮っておく」
彼としては、いい答であった。政所や、評定所衆という機関のあるのを忘れていない。
「……なにとぞ」
と、老大納言は、清涼の殿上でもしないほどな平身低頭を、高時へはして、
「そこで、もひとつ、ここに。御仁恕を仰がねばならぬ一儀がございます」
と、いった。
父皇後醍醐とともに、軍事にたずさわった皇子らは、みな遠くへ流されたが、都の内には、なお中宮やら、十歳以下の幼い宮たちが幾人も、六波羅監視のもとにある。
「……申さば、あどけない御子やら皇女がたで、罪も知らず、みな別れ別れ、他家に預けられておいでなのです。どうか、それらの幼いお方には」
と、幕府の寛大を――わけてこんどの大軍上洛にあたって万一の乱暴などないように――と、定房は、その赦免だけでなく、庇護をも切に頼むのだった。
「よろしい」
高時は、初めて、権力の快を感じた。
「よいことだ、一存で承知した。母の覚海尼公も、そういうことなら、お耳にいれると、たいそうよろこぶ。案じられな……大納言殿」
夜は、小御所の内殿で、饗応がひらかれた。