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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

宮のありかは、熊野、伊勢、十津川の奥、高野の上、さまざまに沙汰されていたが、去年の夏ごろから、吉野築城の事実が関東方にも、やっと、はっきりつかめていた。

宮の抱負は予想外に遠大なものらしい。

十津川の郷士竹原八郎一族を帷幕に加えて、熊野三山から高野、根来の衆徒をひきいれ、大峰山脈の一帯をとりでと見なして、外洋では伊勢、熊野の海賊をつかい、また前衛には、楠木の金剛山をあてておく、という大構想であるようだ。

しかし、宮の理想どおりにならないのもぜひがない。

なるほど熊野、高野、いずこも朝廷との縁はあさくないが、衆徒の衆論はまちまちである。分裂、さぐりあい、中立主義、ここも世間のそとではないのだ。――正成とのしめしあわせでそれは進められていたものの、吉野築城はそうした危ない輿論のうえに敢行されたもので、そもそもムリな作戦だった。

しかし宮は、吉野を宮方の総本城とし、ご自身、全土の総司令官をもって任じ、いわゆる“大塔ノ宮令旨”の檄を海からも陸からも天下に発し――隠岐の父皇のうばい返しまでを――画策していたのである。

けれど、ひとたび、関東の大兵にせまられると、あまりにもその落城は早かった。