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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Read 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 188,242 characters · 380 screens
それは責任を感じない。また咎められる心配もない。衆口金を鎔かすというが、群衆心理がそれであった。仏蘭西王もそのために殺され、近代の政治家もそのために仆れた。
そうして今や庄三郎も、やはりそのために殺されようとしている。
しかし信徒たちの心持ちにも、同情すべきものがあった。彼らにとっては纐纈城主と、その手下どもは敵であった。肉を食い血を啜っても、飽き足りないところの仇敵であった。これまでいかに彼らの同胞が、彼らのために掠奪され、彼らのために血を絞られ、彼らのために染料にされ、纐纈布の犠牲となったか! そうしていかに彼らのために、尊い教団を破壊されたか!
信徒たちにとっては纐纈布は、死の象徴というべきであった。
それを庄三郎は持っているのである。敵の廻し者と信じたのも、決して無理とは云われない。
その上彼らは去冬以来、ほとんど常識を失っていた。そうして殺伐になっていた。教団全部が発狂していた。
もし光明優婆塞が依然として君臨していたならば、こうまで狂暴にはならなかったであろう。
悪運というものは一緒に来る! 土屋庄三郎は悪い時に悪い物を見たものである。