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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Read 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 191,184 characters · 379 screens
お妾さんの家と化物屋敷
一
向かい合いの家の井戸端で、三人のお神さんが噂していた。
「きっと旦那が来ているんだよ」
「粋だが凄味の旦那さんだねえ」
「お吉っつぁんとは似合いってものさ」
お妾さんの家と化物屋敷
一
「お武士さんを旦那に持つもいいが、一つ間違うと先夜のような、切り合い果たし合いになるんだから、お武士さんてもの何しろ恐いよ」
「お吉っつぁんの旦那もお武士さんだが、機嫌を取るにむずかしいだろうねえ」
そこへ美しい町娘が、長い袂を胸に抱き、何気ない様子に来かかったが、
「ちょいとお尋ねいたします」
といった。
お神さん達は娘を見た。
品のある若い美しい、綺麗な身なりの娘なので、互いに顔を見合わせた。
「向こうに貸家札の張ってある家、家主様はどこなのでございましょう?」
こういって娘は指さした。
河東節の三味線の鳴っている家の、すぐの並びに同じような家が、なるほど雨戸に随分古びた、貸家札を貼って立っていた。
「あの家借りるならおよしなさいまし」
と、お神さんの一人が口を出した。
「ありゃアお前さん、化物屋敷なのだよ」
「化物屋敷、まあ恐い」
娘は大仰に身顫いして見せた。
「一年も二年も借り手がつかないので、家主さんすっかり参っているのさ」