Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens

Aozora Bunko

三

「ちょいと訊きますが、御隠居さん。それは一体誰が言ったんです」

「…………」

「儀八さんが賭場へ入ると、誰がお前さんに証拠まで揃えて教えたんです」

平次の不審は、行き亙らざる隙間もありません。

「それだけは勘弁して下さい。相手は私の身体と、浜田屋の身上を案じて、そっと教えてくれたんだから」

「が、そいつが判らないと、手の付けようがありませんよ」

しばらく押問答しましたが、この一事に触れると、喜平は田螺のように口を緘して、一言も密告者を明かそうとしません。

三

「御隠居様。田原屋さんから、お薬を届けて来ましたが」

縁側から声を掛けたのは、番頭の新兵衛でした。年の頃二十七八、これは子飼いの忠義者です。

「それは有難い。よく忘れずに、今晩の役に立てて下すった。お蔭様で、楽に寝られるだろう」

「ヘエ――これでございます」

番頭の新兵衛は、紺と白と二重の薬包紙に包んだ一服の粉薬を、小さい盆の上に載せて持って来たのです。

「お手紙はなかったのかい」

「何にもございません」

「そうか」

「使いの者に駄賃でも――と思いましたが、お薬を置いて帰ってしまった様子で」

「よいよい」

喜平は番頭を母屋へ帰すと、さて平次を相手に今の話の続きを始めました。