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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens

Aozora Bunko

三

二朱か一分の褒美を出したら、進んで離室の番をしようと言うものがあるでしょう」

「また怪我をされると困りますが――」

「大丈夫ですよ、私も後でそっと覗きますから。――もっともこれは言っちゃいけません」

三

その晩平次は、お勝手口からそっと升屋の母家に忍び込みました。案内してくれたのは主人の由兵衛。子刻(十二時)過ぎの店中は、さすがに寝静まって、コトリとも音がしません。

「離室へ寝ているのは?」

平次は廊下に立って囁きます。

「治助――という男で」

「強いんですね」

「平常は至って弱い男ですよ、――褒美を一両出すが、離室へ行って寝る者はないかと言うと、誰よりも先に名乗って出ました」

「お店に何年ぐらい居るでしょう」

「二年ぐらいになるでしょうか。二十七八の、よく働く男ですよ」

主人の由兵衛はこう言いながら、離室の方へ案内します。真っ暗な廊下を足捜りで、馴れない平次には、音を立てまいと思うのが一と難儀です。

「この三月の出代りに、その男も出されるんでしょう」

「その通りですよ親分。よく働くには働きますが、身元が判然しないのと、人柄は好いが、仲間の受けがよくないので、三月には帰すことになっております」