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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
九
ガラッ八は雀躍しながら飛んで来ました。その日の昼頃です。
「華魁上がりの妾を抱えているのは誰だ。解ったかい」
「大判り」
「あの使いの男は、やはり吉原の使い屋か何かだろう」
「親分、恐れ入ったぜ。頬冠りに浅葱の股引、素草鞋を履いて、手紙を持って歩くのは、なるほど使い屋だ。――それから人の家の前へ立って、呼出しでもかけるように、ウロウロ中を覗くんだから、身分を名乗っているようなもので――」
「しょっ引いて来たか」
「南沢様の御手の者に預けておきましたよ」
「よしッ大出来だ。それじゃ、昨夜の関係あいになった者を皆んな集めろ。婿の儀八と、番頭の新兵衛と、田原屋と丸屋、石橋屋の主人だ」
「合点」
四半刻(三十分)経たないうちに浜田屋の離屋に人数は揃いました。ちょうど来合せた同心南沢鉄之進の前に、円く坐ると、
「皆様にちょいと引合せる男があります。下手人をよく知っているという生証人で――」
平次の声の下から、ガラッ八が庭へ引立てて来たのは、浅葱の股引、素草鞋を履いた四十恰好の男です。
「この男が、昨夜毒薬を持って来ました。そして」
平次は立上がって、いつの間に用意したか、両掌に塗っておいた鍋墨を、その男の頬から顎にグイグイとなすってやりました。