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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
五
今まで見なかったのは、何と何だったかを吟味しているのでしょう。
「そうだ」
棚の上から、引摺り下ろしたのは、古い道具箱、――埃だらけの中に、鋸も鉋も鑿もありますが、一と目で、捜している物がないと判ると、軽い失望の様子を見せましたが、すぐ取って返して、自分が今まで腰をおろしていた、新しい桶を起して見ました。
「あッ」
何やら見つかった様子ですが、同時に、久兵衛とガラッ八が入って来ると素知らぬ顔をして、それを迎えます。
「居たかい。親方」
「一人も居ませんよ。皆んな町内の人達ばかりで」
久兵衛は少し気抜けのしたような顔です。
五
「親分、町内じゃ、お民の殺されるのは、当り前だって言ってますよ」
「それはどういうわけだ」
翌る日、ガラッ八はいろいろの情報をかき集めて、平次へ報告に来たのです。
「女は美しかったが、色っぽくて年寄り達の評判はさんざんでさ。伝次郎と約束のあった、佐七の娘のお染を放り出させて、自分から出羽屋に乗込み、伝次郎へ喰い下がったほどの達者な娘ですもの」
「佐七の娘はどうした」
「相変らずブラブラですよ。親父の佐七は名題の嘘吐きで、野幇間のような頼りない人間ですが、あの娘は評判ものだから不思議じゃありませんか。