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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
銭形平次捕物控
一
一
「親分、笑っちゃいけませんよ」
「嫌な野郎だな、俺の面を見てニヤニヤしながら、いきなり笑っちゃいけねえ――とはどういうわけだ」
銭形平次とガラッ八の八五郎は、しばらく御用の合間を、こう暢気な心持で、間抜けな掛合噺のような事を言っているのが、何よりの骨休めだったのです。
「親分にお願いしてくれ――って言うんだが、化物退治じゃねえ」
「化物退治は洒落ているね。場所はどこだい」
「金沢町の升屋なんで」
「両替屋の升屋かい」
「そうですよ。――升屋のお内儀が、銭形の親分さんの御機嫌のいい時、そっとお願いしてみてくれ。詳しい事は、いずれお目に掛ってお話するけれど――って」
「馬鹿だなア。岡っ引に化物退治を頼む奴があるものか。――そんな口なら、岩見重太郎の方へ持って行くがいい」
銭形平次は、こんな事を言うのです。
「その岩見重太郎てぇのは、どこの岡っ引で?」
「ハッハッハッハ、こいつは秀逸だ。岩見重太郎が驚くぜ。岡っ引と間違えられちゃ」
「だって、あっしはまだ、岩見重太郎なんて野郎に逢ったこともありませんよ」
「そうだろうとも、俺も逢ったような気はしねえ」
「へッ、呆れたもんだ」