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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
三
「現に、背中を斬られた時は、分に過ぎた見舞を下すったし、昨日も主人が相談に行くと、焦がした羽目板を直せと言って、頂いたお金が五両――」
「…………」
「もっとも、娘のお民は出羽屋さんでお世話になって、奉公人と言っても、お客分同様、近いうちに、若旦那と娶合せて下さるという、内々の話もあります。あの通り、歌舞伎役者のような若旦那ですから、娘はとんだ仕合せものですよ」
平次はうなずきました。この女の口裏から察すると、よほど重大な秘密が、この事件の裏に潜んでいるような気がしたのです。
「お神さん。とにかく、後であっしが行ってみよう。久兵衛さんには、何にも言わない方がいい。お節介をして、お前さんが叱言を言われても気の毒だから」
こう言ってお夏を帰すと、平次は八五郎に何やら囁いて、その後から出してやりました。
三
「親方、小火か何かあったそうだね。町内で聞込んで来たが」
平次がそう言って、ブラリと神田三崎町の桶屋の店先へ入ったのは、その日の昼過ぎでした。
「おや、銭形の親分さん。好い塩梅に上がって、秋らしい陽気になりました。まアどうぞ」
日頃無愛想な久兵衛が、何を考えたか相好を崩して、上がり框の鉋屑を除けて座を作ります。