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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
八
瓶だけを形見にやれ――と書いてあります。
――弟の勝造は家名を汚すから、生涯寄せ付けてはならぬ、その娘のお勇は、心掛次第で引取って世話をするように――と行届いた指図ですが、これも菊之助の偽作とすると、なんの権威もありません。
――番頭の徳三郎は暖簾を分けて、身を固めさせるように、永年の忠義に酬いる道を欠いてはならぬ――と書いてあります。
「番頭さん、先代御主人の親切、有難いことではないか」
「ハイ」
平次は涙ぐむ徳三郎を見やって、満足そうにうなずきました。
偽の遺言状にしては、いかにも行届いているので、立会った親類方も、なんとなくしんみりしてしまいました。
「この手蹟は先代のと少しは似ているだろうか」
平次は遺言状の文字を指さすと、
「先代御主人の御手蹟に相違ございません、文銭はいつ入れたか分りませんが、とにかく、これは間違いもなく先代の御書きになったものでございます」
徳三郎の言葉には毛ほどの疑いもありません。
親類方や他の雇人達に見せると、「よく偽せてある」と言うだけで、徳三郎ほど一生懸命に保証するのは一人もありません。
八
親類会議はやり直し、菊之助もお勇も相続が出来ないと決って、店はしばらく徳三郎が預かり、親類から後見人を定めて二、三年様子を見ることになりました。