Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
「…………」
「三輪の親分は、番毎こっちの縄張荒しをするのに、親分は浅草から上野一円と聴くと、どう口説いても手を出さないじゃありませんか」
「…………」
「たまには三輪の親分の鼻も明かしてやって下さいよ、親分」
ガラッ八はそんな大それた事を考えていたのでしょう。が、平次は捕物競争などに乗出そうともしません。
「いい加減にしろ馬鹿野郎。三輪の兄哥は三輪の兄哥、俺は俺だ」
「人柄が違い過ぎる――って世間でも言いますよ」
「止さないか、馬鹿野郎」
「へッ、へッ、へッ、何の因果か、その馬鹿野郎ッ――があっしの大好物で、親分にそうやられると、胸がスーッとしますよ。今朝はもう三服盛って貰ったわけで」
ガラッ八の八五郎は、それほど平次に心服しているのでした。
「呆れて物が言えねえ。俺の小言を葛根湯と間違えてやがる」
「でもね、親分。――犬が女を殺した事だけは本当ですぜ。上根岸の寮で、元吉原で鳴らした、薄雲花魁が害られたんで」
独り言ともなく、聞えよがしに言うガラッ八の調子に、
「何だと八。溜屋幸七の手掛お咲が、殺されたとでも言うのか」
平次は思わず開き直りました。車坂の溜屋幸七は、平次とは手習仲間、大店の若主人と岡っ引では、身分が違い過ぎますが、今でも盆暮の挨拶ぐらいは欠かしたことのない仲だったのです。