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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
「それにしちゃ、縁側とお勝手は離れ過ぎていないかな」
と平次。
「軒の下をグルリと廻れば、足跡は残らないよ」
三輪の万七も、犬の足跡には一脈の疑いを持っている様子です。
「雪が消えても、庭があの通り霜解けでひどくなっているから、犬の足跡ぐらい残りそうなものじゃないか」
平次は裏口から出て一応その辺を見廻しました。
「庭じゃありませんよ。犬は砂利や炭俵を敷いた、お勝手口の道へ入って来たんです」
とお金。
「たいそう行儀の良い犬だね」
平次はそう言いながら、側に引っついて居る八五郎に眼くばせしました。犬の足跡のあったあたりを、往来へ出てみろという謎でしょう。
「銭形の、――下手人は犬の背に乗って逃出したとでも思っているのかい」
三輪の万七はまたイヤ味を言います。
「いや、人間を背負って逃げる犬はないだろうが、よく馴らした犬なら、血の付いた刃物ぐらいはどこかへ持って行ってくれるよ」
「…………」
平次は本当にそんな事を考えているのでしょうか。犬が兇器を持って逃げるといった、そんな都合の好いことが本当にあるものでしょうか。
「雨戸の締りは忘れるような事はあるまいね」
平次は重ねてお金に訊ねました。