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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
五
兵庫はまたお町の頭の上へ弓の折を振り上げました。
「殿様、――私は、何にも存じません。――おっしゃる通り浅五郎には逢いましたが、月の出る前に別れて、お船へ帰って参りました」
お町の言うのは本当でしょうが、兵庫は、
「偽りを申すな、――浅五郎はどこに居る」
少しも責手を緩めようとはしなかったのです。
「存じません」
「しぶとい女だ。これでもか」
「あッ、ツ、ツ」
続け様に四つ五つ。
「菊内、代って打て。眼に響いてかなわぬ」
大村兵庫は弓の折をポンと放って奥へ入りました。
五
この辺で少しばかり楊弓の事を説明しておかなければなりません。
言うまでもなくこれは寸法二尺八寸の極めて小さい弓で、初めは楊柳で作りましたが、後にはいろいろの貴い材料で作り、継弓にして金爛の袋などに入れて持って歩くようになりました。
矢は九寸が極り、羽にはいろいろの彩色を施し、七間半の距離から三寸の的を射るのが定法です。一表の矢数は二百本。その中五十本以上の当りには、いろいろの名前が付いたもので、江戸時代の名人と言われた人には、百八十本以上百九十四五本当てる人は決して少なくなく、稀には二百本「皆矢」