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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
越前屋へ着くと、親類方がみんな集まって、勝造親娘、菊之助夫婦、徳三郎などと一緒に、仏壇から取出した瓶を睨んで平次の来るのを待っているところでした。
「遅くなりました」
挨拶が一とわたり。
「それでは宜しゅうございますか。皆様のお言葉に従って、私が封印を切ります」
親類総代の錨屋万兵衛、瓶の封印の異常のないことを確かめさした上、鋏を借りて、麻縄を一本一本切りました。
油紙を除くと、中からはボロボロの渋紙と腐った麻縄、その下に板の蓋が少しばかり見えております。
「ちょっと拝見」
平次は行脚り寄って、渋紙と麻縄と蓋を見ました。この辺は湿気のひどいところで、天日の届かぬ床下に三年以上埋められたのですから、地湿りと黴で、滅茶滅茶に傷んでおりますが、埋めた時のままに相違はなく、腐った麻縄や、歪んだ蓋にも、後から手を加えた様子は見えません。
「蓋を払いますよ」
万兵衛老人の手でハネられた蓋。
「アッ」
中は一パイの銭、金。
「退いて下さい、茣蓙の上へあけますから」
人を退かせて、茣蓙の上へあけると、中から出て来たのは、慶長大判、江戸坐小判、一分判、丁銀、取交ぜて三百両あまり、詰めには寛永銭が二三百枚、その真ん中に、油紙に包んだ遺言状が一通、さして傷みもせずに交っております。