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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
七
「話は大概聴いたが、酒屋の倅も疑いは晴れたそうだな」
「ヘエ」
あれは同心の湯浅鉄馬が、無理に縛って行った、とは平次は言いません。恐れ入った様子で、首を垂れました。
「外に心当りがあるか」
「何にもございません」
「困ったものだな。外ならぬ御用祭に、涜れがあっては恐れ入る。平次、今日中と言いたいが、せめて明日は下手人を挙げなければならぬぞ、町方の名折れにならぬよう――」
「ヘエ――」
「確と申付けるぞ」
「ヘエ――」
銭形の平次もすっかり恐れ入ってしまいました。こうまで言われると、日頃世話になっている笹野新三郎の顔の立つよう、どんな事をしても下手人を挙げなければなりません。
七
翌る日は九月十五日、日本晴の上天気、いよいよ神田祭の当日でした。
神輿に続いて三十六番の山車、――その頃はまだ城内へ入る慣わしはありませんが、それぞれ趣向をこらして、行列は氏子の町内を一と廻りします。
金沢町の山車の前には、手古舞姿の美しい娘が五人、お勢をピカ一にして、今日を晴れと押出し、その間を縫って潮吹の面を冠った道化が一人、紅白の扇子を両手に持って、前から、後ろから、宙を踏むように踊り歩いて、山車と手古舞の娘と、手を牽く若い衆を煽ぎました。