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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
それくらいの細工はあるだろう」
「面白くねえ細工だ、泥棒らしくもねえ」
「怒るなよ八。ところで、近頃界隈へ越して来た人間は?」
「通新石町から筋違見附、浅草御門、橋を越して外神田あたりまで、町役人を一々当ってみたが、この一と月の間に越して来た者は二十二三軒はあります」
「その中で一番泥棒と縁の遠いのは?」
「驚いたね、怪しいのは調べ上げて来たが」
「あれだけ器用な泥棒が、手前達が見て怪しいと思うような暮しをするものか。一番犬らしい人間が一番臭いに決っているよ」
「正に一言もねえ。が、そんなのを知りたいとおっしゃるなら、親分、二人だけは確かにありますぜ」
「言ってみな、誰と誰だ」
「松永町へ門跡様の裏から越して来た、中気病みの三次郎と、この町内の、しかも路地の外へ上州から出て来なすった、母娘者のお通さん」
「馬鹿野郎、俺は真面目に訊いているんだぜ」
「だから嫌さ。一番泥棒らしくねえのなら、誰が見たってこの二人だ」
「それじゃ泥棒らしいのは?」
「浪人者の森右門と、三次郎の娘で八人芸のお島」
「なるほど」
「この二人が組めば天下の大乱も起せる」
「言う事が大きいね」
森右門は竪大工町の裏店住居で、家になんか滅多に居た事のない人間。