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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens

Aozora Bunko

五

お島の顔には訳のわからぬ事件に対する不安の外に、何の蟠りもありません。

「これは大変なものだ。お島さん、この守り袋の出よう一つで、お前はどんな事になるか解らなかった」

「まア」

「これは俺が借りて行く。いいだろうな」

「え、どうぞ」

平次は不安と疑問を残したままで立ち上がりました。

「ついでと言っちゃ悪いが、お前の父さんを見舞って行こうか」

「取乱しておりますが」

気の進まないらしいお島に案内させて、平次は二階へ昇りました。

小綺麗といっても、貧しそうな調度の中に、それでも温かそうに寝ているのは、お島の父の三次郎という六十近い男、若い時分は鳴らした武士だったと言いますが、今は見る影もなく萎んで、口もろくにきけないような有様です。

「銭形の親分さんだそうで、とんだ姿でお目にかかります」

起直ろうとするのを、平次はどんなに骨を折って止めたことでしょう。側にはそれでも畳んだまま、たしなみの紋付が一襲、蔦の紋のところに、白い糸のあるのは仕立直しの時着いたのでしょうか、平次はフトそんな事に気が付きました。

五

「親分、驚いちゃいけねえ」

「何だ、八」

「八人芸のお島が縛られた」