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しゅんちゅう
春昼・春昼後刻
泉 鏡花
Read 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,079 characters · 102 screens
微笑みながら、一枚ずつ。
扉の方へうしろ向けに、大な賽銭箱のこなた、薬研のような破目の入った丸柱を視めた時、一枚懐紙の切端に、すらすらとした女文字。
うたゝ寐に恋しき人を見てしより
夢てふものは頼みそめてき
――玉脇みを――
と優しく美く書いたのがあった。
「これは御参詣で。もし、もし、」
はッと心付くと、麻の法衣の袖をかさねて、出家が一人、裾短に藁草履を穿きしめて間近に来ていた。
振向いたのを、莞爾やかに笑み迎えて、
「些とこちらへ。」
賽銭箱の傍を通って、格子戸に及腰。
「南無」とあとは口の裏で念じながら、左右へかたかたと静に開けた。
出家は、真直ぐに御廚子の前、かさかさと袈裟をずらして、袂からマッチを出すと、伸上って御蝋を点じ、額に掌を合わせたが、引返してもう一枚、彳んだ人の前の戸を開けた。
虫ばんだが一段高く、かつ幅の広い、部厚な敷居の内に、縦に四畳ばかり敷かれる。壁の透間を樹蔭はさすが、縁なしの畳は青々と新しかった。
出家は、上に何にもない、小机の前に坐って、火入ばかり、煙草なしに、灰のくすぼったのを押出して、自分も一膝、こなたへ進め、
「些とお休み下さい。