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しゅんちゅう
春昼・春昼後刻
泉 鏡花
Read 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,079 characters · 102 screens
四
唯見る、それさえ不意な上、胴体は唯一ツでない。鬣に鬣が繋がって、胴に胴が重なって、凡そ五、六間があいだ獣の背である。
咄嗟の間、散策子は杖をついて立窘んだ。
曲角の青大将と、この傍なる菜の花の中の赤楝蛇と、向うの馬の面とへ線を引くと、細長い三角形の只中へ、封じ籠められた形になる。
奇怪なる地妖でないか。
しかし、若悪獣囲繞、利牙爪可怖も、※蛇及蝮蝎、気毒煙火燃も、薩陀彼処にましますぞや。しばらくして。……
四
のんきな馬士めが、此処に人のあるを見て、はじめて、のっそり馬の鼻頭に顕れた、真正面から前後三頭一列に並んで、たらたら下りをゆたゆたと来るのであった。
「お待遠さまでごぜえます。」
「はあ、お邪魔さまな。」
「御免なせえまし。」
と三人、一人々々声をかけて通るうち、流のふちに爪立つまで、細くなって躱したが、なお大なる皮の風呂敷に、目を包まれる心地であった。
路は一際細くなったが、かえって柔かに草を踏んで、きりきりはたり、きりきりはたりと、長閑な機の音に送られて、やがて仔細なく、蒼空の樹の間漏る、石段の下に着く。
この石段は近頃すっかり修復が出来た。