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しゅんちゅう 

春昼・春昼後刻

泉 鏡花

Read 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,079 characters · 102 screens

Aozora Bunko

十九

(万歳々々、今夜お忍か。)

(勿論、)

と答えて、頭のあたりをざぶざぶと、仰いで天に愧じざる顔色でありました。が、日頃の行いから察して、如何に、思死をすればとて、いやしくも主ある婦人に、そういう不料簡を出すべき仁でないと思いました、果せる哉。

冷奴に紫蘇の実、白瓜の香の物で、私と取膳の飯を上ると、帯を緊め直して、

(もう一度そこいらを。)

いや、これはと、ぎょっとしたが、垣の外へ出られた姿は、海の方へは行かないで、それ、その石段を。」

一面の日当りながら、蝶の羽の動くほど、山の草に薄雲が軽く靡いて、檐から透すと、峰の方は暗かった、余り暖さが過ぎたから。

十九

降ろうも知れぬ。日向へ蛇が出ている時は、雨を持つという、来がけに二度まで見た。

で、雲が被って、空気が湿った所為か、笛太鼓の囃子の音が山一ツ越えた彼方と思うあたりに、蛙が喞くように、遠いが、手に取るばかり、しかも沈んでうつつの音楽のように聞えて来た。靄で蝋管の出来た蓄音器の如く、かつ遥に響く。

それまでも、何かそれらしい音はしたが、極めて散漫で、何の声とも纏まらない。村々の蔀、柱、戸障子、勝手道具などが、日永に退屈して、のびを打ち、欠伸をする気勢かと思った。