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しゅんちゅう
春昼・春昼後刻
泉 鏡花
Read 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,079 characters · 102 screens
三十
」
「どうと言って、」
と言に連れられた春のその日中から、瞳を美女の姿にかえした。
「貴下は、どんなお心持がなさいますえ、」
「…………」
「お楽みですか。」
「はあ、」
「お嬉しゅうございますか。」
「はあ、」
「お賑かでございますか。」
「貴女は?」
「私は心持が悪いんでございます、丁ど貴下のお姿を拝みました時のように、」
と言いかけて吻と小さなといき、人質のかの杖を、斜めに両手で膝へ取った。情の海に棹す姿。思わず腕組をして熟と見る。
三十
「この春の日の日中の心持を申しますのは、夢をお話しするようで、何んとも口へ出しては言えませんのね。どうでしょう、このしんとして寂しいことは。やっぱり、夢に賑かな処を見るようではござんすまいか。二歳か三歳ぐらいの時に、乳母の背中から見ました、祭礼の町のようにも思われます。
何為か、秋の暮より今、この方が心細いんですもの。それでいて汗が出ます、汗じゃなくってこう、あの、暖かさで、心を絞り出されるようですわ。苦しくもなく、切なくもなく、血を絞られるようですわ。柔かな木の葉の尖で、骨を抜かれますようではございませんか。こんな時には、肌が蕩けるのだって言いますが、私は何んだか、水になって、その溶けるのが消えて行きそうで涙が出ます、涙だって、悲しいんじゃありません、そうかと言って嬉しいんでもありませ