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しゅんちゅう
春昼・春昼後刻
泉 鏡花
Read 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,079 characters · 102 screens
二十三
」
二十三
「寝衣にぐるぐると扱帯を巻いて、霜のような跣足、そのまま向うむきに、舞台の上へ、崩折れたように、ト膝を曲げる。
カンと木を入れます。
釘づけのようになって立窘んだ客人の背後から、背中を摺って、ずッと出たものがある。
黒い影で。
見物が他にもいたかと思う、とそうではない。その影が、よろよろと舞台へ出て、御新姐と背中合わせにぴったり坐った処で、こちらを向いたでございましょう、顔を見ると自分です。」
「ええ!」
「それが客人御自分なのでありました。
で、私へお話に、
(真個なら、其処で死ななければならんのでした、)
と言って歎息して、真蒼になりましたっけ。
どうするか、見ていたかったそうです。勿論、肉は躍り、血は湧いてな。
しばらくすると、その自分が、やや身体を捻じ向けて、惚々と御新姐の後姿を見入ったそうで、指の尖で、薄色の寝衣の上へ、こう山形に引いて、下へ一ツ、△を書いたでございますな、三角を。
見ている胸はヒヤヒヤとして冷汗がびっしょりになる。
御新姐は唯首垂れているばかり。
今度は四角、□、を書きました。
その男、即客人御自分が。
御新姐の膝にかけた指の尖が、わなわなと震えました……とな。