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しゅんちゅう
春昼・春昼後刻
泉 鏡花
Read 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,079 characters · 102 screens
二
はい、お前様、何か尋ねごとさっしゃるかね。彼処の家は表門さ閉っておりませども、貸家ではねえが……」
その手拭を、裾と一緒に、下からつまみ上げるように帯へ挟んで、指を腰の両提げに突込んだ。これでは直ぐにも通れない。
「何ね、詰らん事さ。」
「はいい?」
「お爺さんが彼家の人ならそう言って行こうと思って、別に貸家を捜しているわけではないのだよ。奥の方で少い婦人の声がしたもの、空家でないのは分ってるが、」
「そうかね、女中衆も二人ばッかいるだから、」
「その女中衆についてさ。私がね、今彼処の横手をこの路へかかって来ると、溝の石垣の処を、ずるずるっと這ってね、一匹いたのさ――長いのが。」
二
怪訝な眉を臆面なく日に這わせて、親仁、煙草入をふらふら。
「へい、」
「余り好物な方じゃないからね、実は、」
と言って、笑いながら、
「その癖恐いもの見たさに立留まって見ていると、何じゃないか、やがて半分ばかり垣根へ入って、尾を水の中へばたりと落して、鎌首を、あの羽目板へ入れたろうじゃないか。羽目の中は、見た処湯殿らしい。それとも台所かも知れないが、何しろ、内にゃ少い女たちの声がするから、どんな事で吃驚しまいものでもない、と思います。