Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しゅんちゅう
春昼・春昼後刻
泉 鏡花
Read 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,079 characters · 102 screens
三十三
「きっとそうと極りませんから、もしか、死んでそれっきりになっては情ないんですもの。そのくらいなら、生きていて思い悩んで、煩らって、段々消えて行きます方が、いくらか増だと思います。忘れないで、何時までも、何時までも、」
と言い言い抜き取った草の葉をキリキリと白歯で噛んだ。
トタンに慌しく、男の膝越に衝とのばした袖の色も、帯の影も、緑の中に濃くなって、活々として蓮葉なものいい。
「いけないわ、人の悪い。」
散策子は答えに窮して、実は草の上に位置も構わず投出された、オリイブ色の上表紙に、とき色のリボンで封のある、ノオトブックを、つまさぐっていたのを見たので。
三十三
「こっちへ下さいよ、厭ですよ。」
と端へかけた手を手帳に控えて、麦畠へ真正面。話をわきへずらそうと、青天白日に身構えつつ、
「歌がお出来なさいましたか。」
「ほほほほ、」
と唯笑う。
「絵をお描きになるんですか。」
「ほほほほ。」
「結構ですな、お楽しみですね、些と拝見いたしたいもんです。」
手を放したが、附着いた肩も退けないで、
「お見せ申しましょうかね。」
あどけない状で笑いながら、持直してぱらぱらと男の帯のあたりへ開く。