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しゅんちゅう 

春昼・春昼後刻

泉 鏡花

Read 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,079 characters · 102 screens

Aozora Bunko

繋合わせば筏になる。しかるに、綱も棹もない、恋の淵はこれで渡らねばならないものか。

生身では渡られない。霊魂だけなら乗れようものを。あの、樹立に包まれた木戸の中には、その人が、と足を爪立ったりなんぞして。

蝶の目からも、余りふわふわして見えたでござろう。小松の中をふらつく自分も、何んだかその、肩から上ばかりに、裾も足もなくなった心地、日中の妙な蝙蝠じゃて。

懐中から本を出して、

蝋光高懸照紗空、    花房夜搗紅守宮、

象口吹香※※暖、    七星挂城聞漏板、

寒入罘※殿影昏、    彩鸞簾額著霜痕、

ええ、何んでも此処は、蛄が鉤闌の下に月に鳴く、魏の文帝に寵せられた甄夫人が、後におとろえて幽閉されたと言うので、鎖阿甄。とあって、それから、

夢入家門上沙渚、    天河落処長洲路、

願君光明如太陽、

妾を放て、そうすれば、魚に騎し、波をいて去らん、というのを微吟して、思わず、襟にはらはらと涙が落ちる。目をって、その水中の木材よ、いで、浮べ、鰭ふって木戸に迎えよ、と睨むばかりに瞻めたのでござるそうな。些と尋常事でありませんな。

詩は唐詩選にでもありましょうか。