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しゅんちゅう
春昼・春昼後刻
泉 鏡花
Read 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,079 characters · 102 screens
た。
御新姐は、気分が勝れねえとって、二階に寝てござらしけえ。
今しがた小雨が降って、お天気が上ると、お前様、雨よりは大きい紅色の露がぽったりぽったりする、あの桃の木の下の許さ、背戸口から御新姐が、紫色の蝙蝠傘さして出てござって、(爺やさん、今ほどはありがとう。その厭なもののいた事を、通りがかりに知らして下すったお方は、巌殿の方へおいでなすったというが、まだお帰りになった様子はないかい。)ッて聞かしった。
(どうだかね、私、内方へ参ったは些との間だし、雨に駈出しても来さっしゃらねえもんだで、まだ帰らっしゃらねえでごぜえましょう。
それとも身軽でハイずんずん行かっせえたもんだで、山越しに名越の方さ出さっしゃったかも知れましねえ、)言うたらばの。
(お見上げ申したら、よくお礼を申して下さいよ。)ッてよ。
その溝さ飛越して、その路を、」
垣の外のこなたと同一通筋。
「ハイぶうらりぶうらり、谷戸の方へ、行かしっけえ。」
と言いかけて身体ごと、この巌殿から橿原へ出口の方へ振向いた。身の挙動が仰山で、さも用ありげな素振だったので、散策子もおなじくそなたを。……帰途の渠にはあたかも前途に当る。