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しゅんちゅう
春昼・春昼後刻
泉 鏡花
Read 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,079 characters · 102 screens
ん。
あの貴下、叱られて出る涙と慰められて出る涙とござんすのね。この春の日に出ますのは、その慰められて泣くんです。やっぱり悲しいんでしょうかねえ。おなじ寂しさでも、秋の暮のは自然が寂しいので、春の日の寂しいのは、人が寂しいのではありませんか。
ああ遣って、田圃にちらほら見えます人も、秋のだと、しっかりして、てんでんが景色の寂しさに負けないように、張合を持っているんでしょう。見た処でも、しょんぼりした脚にも気が入っているようですけれど、今しがたは、すっかり魂を抜き取られて、ふわふわ浮き上って、あのまま、鳥か、蝶々にでもなりそうですね。心細いようですね。
暖い、優しい、柔かな、すなおな風にさそわれて、鼓草の花が、ふっと、綿になって消えるように魂がなりそうなんですもの。極楽というものが、アノ確に目に見えて、そして死んで行くと同一心持なんでしょう。
楽しいと知りつつも、情ない、心細い、頼りのない、悲しい事なんじゃありませんか。
そして涙が出ますのは、悲しくって泣くんでしょうか、甘えて泣くんでしょうかねえ。
私はずたずたに切られるようで、胸を掻きむしられるようで、そしてそれが痛くも痒くもなく、日当りへ桃の花が、はらはらとこぼれるようで、長閑で、麗で、美しくって、それでいて寂しくって、雲のない空が頼りのないようで、