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しゅんちゅう
春昼・春昼後刻
泉 鏡花
Read 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,079 characters · 102 screens
た山でとまる。橿原の奥深く、蒸し上るように低く霞の立つあたり、背中合せが停車場で、その腹へ笛太鼓の、異様に響く音を籠めた。其処へ、遥かに瞳を通わせ、しばらく茫然とした風情であった。
「そうですねえ、はじめは、まあ、心持、あの辺からだろうと思うんですわ、声が聞えて来ましたのは、」
「何んの声です?」
「はあ、私が臥りまして、枕に髪をこすりつけて、悶えて、あせって、焦れて、つくづく口惜くって、情なくって、身がしびれるような、骨が溶けるような、心持でいた時でした。先刻の、あの雨の音、さあっと他愛なく軒へかかって通りましたのが、丁ど彼処あたりから降り出して来たように、寝ていて思われたのでございます。
あの停車場の囃子の音に、何時か気を取られていて、それだからでしょう。今でも停車場の人ごみの上へだけは、細い雨がかかっているように思われますもの。まだ何処にか雨気が残っておりますなら、向うの霞の中でしょうと思いますよ。
と、その細い、幽な、空を通るかと思う雨の中に、図太い、底力のある、そして、さびのついた塩辛声を、腹の底から押出して、
(ええ、ええ、ええ、伺います。お話はお馴染の東京世渡草、商人の仮声物真似。