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しゅんちゅう
春昼・春昼後刻
泉 鏡花
Read 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,079 characters · 102 screens
で、路と一緒に、人通の横を切って、田圃を抜けて来たのである。
正面にくぎり正しい、雪白な霞を召した山の女王のましますばかり。見渡す限り海の色。浜に引上げた船や、畚や、馬秣のように散ばったかじめの如き、いずれも海に対して、我は顔をするのではないから、固より馴れた目を遮りはせぬ。
かつ人一人いなければ、真昼の様な月夜とも想われよう。長閑さはしかし野にも山にも増って、あらゆる白砂の俤は、暖い霧に似ている。
鳩は蒼空を舞うのである。ゆったりした浪にも誘われず、風にも乗らず、同一処を――その友は館の中に、ことことと塒を踏んで、くくと啼く。
人はこういう処に、こうしていても、胸の雲霧の霽れぬ事は、寐られぬ衾と相違はない。
徒らに砂を握れば、くぼみもせず、高くもならず、他愛なくほろほろと崩れると、また傍からもり添える。水を掴むようなもので、捜ればはらはらとただ貝が出る。
渚には敷満ちたが、何んにも見えない処でも、纔に砂を分ければ貝がある。まだこの他に、何が住んでいようも知れぬ。手の届く近い処がそうである。
水の底を捜したら、渠がためにこがれ死をしたと言う、久能谷の庵室の客も、其処に健在であろうも知れぬ。