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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Read 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 191,184 characters · 379 screens
「田沼意次、この地におります」
「ナ、何を!」
と高阪郡兵衛、自分の耳を疑いながら、
「田沼がこの地に? バ、馬鹿な!」
「この熊太郎、虚言は申さぬ」
「すりゃ真実※(感嘆符疑問符、1-8-78) で、どこに?」
「社家北条主計の屋敷に!」
「…………」
「さればこそ殿冬次郎様には、討って取ろうと申されるのでござる!」
「…………」
ドッと郡兵衛は座に坐った。
「意外も意外……老中たる彼が……かかるところに……しかも真実! ……詳しく事情お話しくだされい! ……いやいや聞かぬ、事情など聞かぬ! ……いかにも冬次郎様仰せのごとく、悪政を施す大名ばらの、かれこそ元兇にござりまする……そいつがいる! この地にいる! ……ヨーシ、血祭り、一揆の血祭り、しかも何んたる大犠牲ぞや! ……拙者踏み込み、一刀に刺し!」
またも性急飛び立ち上がり、郡兵衛は走って行こうとした。
「静かに、郡兵衛、まず静かに」
冬次郎は冷静にそういってとめた。
「十二神貝十郎先方にいるぞ!」
十
「十二神貝十郎? あの与力の?」
「与力ながらも器量人、彼奴が田沼方に附いているのじゃ。……そればかりでない高島藩よりも、おそらく小諸の藩よりも、内々警護の武士を出し、田沼の身辺守りおるはずじゃ。