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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Read 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 191,184 characters · 379 screens
忽ち湧き起こる閧の声! 竹法螺の音、法螺貝の音!
見よ見よ丘の脈の上へ、百、二百、三百、四百と、数百の人影があらわれて、盆地へなだれ込んで来るではないか。
対岸にいた城方の武士が、やにわに鉄砲を撃ちかけて、浅瀬を渡り橋を渡り、一揆の衆へ取りかかったため、そこは烏合の衆であり、百姓を主とした勢であり、殊には鉄砲を発たれたので、恐怖に襲われ一たまりもなく、崩れ立って盆地へ逃げ込んだ――その一揆の衆であった。
それを追い立て、追い立て追い立て、城方の武士が弓、鉄砲、槍や刀で撃ちつ斬りつ、これも盆地へなだれ込んで来た。
斬られるもの撃たれるもの、悲鳴怒声、混乱、人渦!
盆地は修羅の巷となった。
二十一
混乱修羅の巷を分け、遮るものを斬り倒し斬り倒し、小脇にままごと狂女のお浦を、人質のようにひっ抱えた、臼杵九十郎の遁がれ行く後から、範之丞と織江とが追って走り、その後をお吉が髪ふり乱し、狂乱の女さながらに、走って行く姿が眼についた。
遁がれ行く九十郎の行手にあたって、鉄砲に胸板撃ちぬかれ、血へどを吐いて斃れている、山県大蔵の死骸があった。
(真面目な人間は非業に死ぬなア。