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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens

Aozora Bunko

あんなのは人殺し癲癇で――」

「下らない事を言うな。三人ともここから真っ直ぐに帰ったのか」

「田原屋の旦那だけは、隣町の大津屋へ行ったそうです。急ぎの仕入物を打合せて、京都へ荷為替を組む打合せがあったそうで、これは間違いがありません。大津屋へも行って、確かに田原屋さんが来て、一刻近くも奥に居なすった――と聴いたんですから」

「他の二人は?」

「そのまま寝たそうですよ」

「それを見た者があるだろうな」

「そう言うと、丸屋の源吉は怒りましたよ。寝るのに一々証人を立てる奴があるか。そう言ったが気に入らなきゃ、枕にでも訊けッ――て、親分の前だが、ありゃ少し気が変ですぜ。いきなり寝間へ行くと、枕を叩き付けて、そう言うじゃありませんか」

「フーム」

平次は腕を組んでしまいました。

「投げた枕にとがはない――って、唄の文句はよく言ったもので、親分」

「黙らないか、際限のない」

「でもここまで言わないと解りませんよ」

ガラッ八の報告は、決して無駄ではなかったのです。この一本調子な源吉は、ずいぶん喜平を殺しかねない事情を持っていたのです。

でも、――平次は何となくそれを信じる気にはなれなかったのです。