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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
「化物が忙しくなったわけですね」
「ヘエ――」
主人は判らないながら、平次へ合槌を打っております。
「おや?」
由兵衛は立止りました。雨戸が一枚開いて、縁側には梅の蕾をふくらませる、柔かな風が吹込んでいるのです。
まだ月は出ませんが、庭には、揺らぐ仄明り。
「シーッ」
平次は由兵衛の快を押えました。ここで何か言い出されては、何もかもいけなくなってしまいます。
「治助は床の中に居ない様子です」
「…………」
平次はそれに応えず、黙って外を指しました。
「あッ」
離室の裏、少し荒れた窓寄りの辺を、一生懸命掘り下げている二人の人影があったのです。
「黙って」
平次は由兵衛の驚きを押えるのが精一杯でした。
「小さい方が治助です」
「一人は相棒でしょう」
「何を掘る積りでしょう?」
「シッ」
窓の外の二人は掘る手を休めて、腰を伸しました。土の上へ、横に置いた泥棒龕灯の灯は、塀に反射して、覚束なくも二人の顔を照します。
治助というのは、なるほど三十には間があるでしょう。少し華著に見える男ですが、こんなのが案外な強か者かも判りません。もう一人は四十前後、凄まじい青髯で、頬冠りを取って汗を拭いたところを見ると、山賊の小頭が戸惑いして飛込んだ――といった男です。