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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
形見にやるから、掘出して遣ってくれ――。
と、こう言ったのです。
「島から許されて帰ると、大金を掛けて手蔓を拵え、二年前に升屋へ入込んだが、どうしても井戸を掘る隙がねえ。そのうちに素性がバレそうになって、この三月にはお払箱と決ったから、大急ぎでこの青髯の竹の野郎を仲間に引入れ、化物騒ぎをして離室を明けさせようと企んだが、主人の由兵衛は確り者で、少しも怖がらねえ。――昨夜はようやく井戸を掘って、大願成就と思うとこの始末だ。銭形の親分、面目次第もないが、これが掛値のねえ白状だ。お小姓の治郎助も、あれほど馬鹿にされようとは思わなかったよ」
少し不貞腐れますが、この言葉に嘘があろうとも思われません。笹野新三郎と銭形の平次は、何とはなしに顔を見合せました。
「平次、井戸の中には、確かに金はなかったろうな」
と笹野新三郎。
「それはもう間違いはございません」
「すると、島で死んだ与市とかいう番頭が、治郎助を使って、井戸を掘らせたのは?」
「死体を掘り出させるためでございましょう」
「何のためだ」
「讐を討つためでございましょう。升屋の先代を殺した下手人に怨みがあって、それに思い知らせるため――」