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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
締めた手拭は、寮の手洗場にあった品で、何の手掛りにもならず、その晩は自棄に寒かったので、庭はカチカチに凍って、足跡一つ残してはいません。
急を聴いて、平次も万七も駆け付けました。平次の縮尻も小さくはありませんが、幸七をお咲殺しの下手人と思い込んでいた、三輪の万七もあまり大きな顔は出来ません。
「主人の外へ出たのを知ってる者はないか」
再三再四、同じことをくり返して訊くと、
「番頭さんが――」
下女のお金は、恐る恐るこう言うのです。
番頭の徳兵衛はすぐ平次と万七の前に引出されました。
「昨夜主人と庭へ出たそうじゃないか」
万七の顔には仮借がありません。
「出ました。が、それは宵のうちで」
徳兵衛は真っ蒼になりました。
「どんな事をしたんだ」
「人の耳に入れたくない用事でございました」
「それを聴かして貰おうじゃないか」
万七は開き直ります。
「こうなれば、みんな申上げます。――実は主人は溜屋の養子で、――車坂本店の御新造様が、まだ月々の帳面を御覧になりますが、去年の暮から、身請やら、普請やらの出費で、千両近い穴があいております。それを晦日が明日に迫っては、私の勘考でどうにもなりません。