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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
「当り前よ。幽霊なんかの真似をして綾吉と逢引した上、痴話喧嘩が嵩じて殺したに違えねえ。昨夜墓場の隅へ追い詰めたのは俺だ、とは気が付かなかったろう」
「違う、違うよ」
「青い提灯と鬘が何よりの証拠だ。まだ家捜したら、鼠色の裾の長い単衣も出て来るだろう」
「違うよ」
「さア、それでも下手人でないって言い張るなら、お白洲の砂利を掴んで申上げろ」
「違うよ。私が別れて帰った時は、綾さんは上機嫌で生きていた」
「何を」
お喜多は必死でした。懐の捕縄を探しながら一歩、一歩、迫って来るガラッ八を押し隔てるように、思わず置舞台に足が掛ります。
「誰が殺したか、私も敵が討ってやりたい。教えておくれ」
「お前の胸に訊くんだ」
「えッ、訳の解らない岡っ引じゃないか。幽霊の冗談は私だが、殺したのは私じゃないと言うのに」
「何を言やがる。覚えのない者が、逃げ支度をするかい」
ガラッ八は一歩詰め寄りました。万七への面当て、ここでお喜多を縛って、石屋の力松を助けてやりたい心持で一パイだったのです。
「えッ、なんて解らない唐変木だろう」
辛くも八五郎の手を逃れたお喜多は、さっと後ろへ飛びました。石塔の上を渡って、柳の枝から塀外へトンボ返りをする軽捷な身体ですが、涙一パイ溜めた眼で距離を見積り損ねたものか、風呂敷包に足を取られて、思わず舞台の上へもんどり打ち