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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
「親分、お願いだ」
「俺には大方見当だけは付いたが、まだ解らないことがある」
「とにかく、お喜多の縄を解いてやって下さい」
「一度縛ったものを、真実の下手人が挙がる前に許して貰うのは難しいが、お喜多が殺したのでないことだけは確かだ」
「どんな証拠があるんです、親分」
「あの玄翁は両手で振りおろしたのじゃない。両手で使ったら、血飛沫で全身蘇芳を浴びたようになるはずだ。――あれは二枚屏風を小楯に、片手で打ちおろしたんだ。お前も屏風一面に飛沫いた血を見たろう」
「…………」
「あの玄翁を片手で使って、寸分の見当の違わないところを見ると、男の手で、それもあんな道具を使い馴れた人間だ」
「それじゃ、力松」
ガラッ八はゴクリと固唾を呑みました。ここで万七にしてやられては眼も当てられません。
「いや、力松はズーッと皆んなと一緒に居たはずだ。幽霊を捕え損なった時は、手前の側に居たっていうじゃないか」
「ヘエ」
「力松でないとすると――」
「…………」
「変な顔をするなよ、八、お喜多じゃないよ。――番太の親爺が、力松が綾吉の長屋から出た後で、半刻ばかりして灯が消えたって言ったろう」
「その通りですよ、親分」