Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
もっとも私は別だが、何分こう年を取っちゃ――」
市五郎はそう言いながら、すっかり禿げ上がった前額をツルリと撫で上げました。
「ホ、ホホホホホ」
と笑いの洪水、――先刻、お春が殺されたと聞いて、青くなったことも忘れて、もう若い女らしく浮かれ調子になっております。
「念のために、ともかく、ザッと見ておきましょう」
平次は素気もなく、一人一人、女の手拭――脂粉に染んで少し艶くのを見ておりましたが、三人目の手拭を手に取ると、ギョッとした様子で、店先の提灯の下へ持って行きました。端っこには、紛れもなく、墨で書いたたの字。
「私の手拭がどうかしましたか、親分」
そう言って顔を挙げたのは、同じ金沢町の質屋の娘お勢、殺されたお春とは無二の仲で、負けず劣らず美しい、十八娘の、少し物に怯えた顔だったのです。
「いや、そう言うわけでもないが――お勢さん、この端っこのたの字は、お前さんが書いたのかえ」
「あらッ、そんな字なんか――私、何にも知りませんよ。誰かの手拭と変ったのかしら」
お勢は愕然として顔色を変えました。日頃から気象者で通ったお勢ですが、何となくただならぬ空気の圧迫と、思いも寄らぬ手拭の文字に驚いたのでしょう。