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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens

Aozora Bunko

――夜中過ぎになって、妙にキナ臭いと思って、起きてみると、庇の下に積んである、木っ葉や鉋屑に火がついて燃え上がりかけてるじゃありませんか。飛出そうとすると表もお勝手も、外から薪で心張がして、動きゃアしません。便所の窓から這い出して、稼業柄汲み置きの水をブッ掛けてようやく消しましたが、宵に一と雨来て、鉋屑が湿っていなきゃア、間違いもなく焼き殺されるところでしたよ」

「それをどうして放っておいたんだ」

「主人のへお届けするように言いましたが、後が面倒だから――って聴きやしません」

「…………」

「三度目の正直で、今度は寝首でも掻かれるんでしょう。お願いですから、親分さん、主人には内証で、私ども一家に祟る人間を捜し、処刑をしないまでも、これからそんな事のないように、うんとおどかしてやって下さい」

世帯摺れのした四十女は、遠慮のない調子で、こう言うのでした。

「素人のような事を訊くが――お前さんの家をうんと怨んでいる者は誰だい」

「数え切れないほどありますよ。主人があの通りだし」

お夏は淋しそうでした。桶屋の久兵衛は、神田では人に知られた強か者で、お上の厄介にはなりませんが、ずいぶん諸方をいやがらせて歩くたちの男だったのです。