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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens

Aozora Bunko

「見事な道具だが、血は付いちゃいないな」

「親分、御冗談でしょう」

少しあわてた弁次郎に、平次は面白そうに笑って匕首を返してやりました。

「ゆうべは二人とも外へ出なかったんだな」

「ヘエ――珍しく親方が店へ来て泊るっていうから、あっしと相吉さんは、横網の家の二階で夜中まで話し込んで、さんざんお秀さんに小言を言われながら寝ましたよ」

弁次郎はそんな事まで、先を潜って弁解するのでした。

「八、しばらくここを頼むぜ。一人も外へ出しちゃならねえ、いいか」

「親分は?」

「ちょいと八卦でも置いて来るよ」

平次は笑いながら出て行きました。行先は横網のお秀の家であったことは言うまでもありません。

留守番は下女が一人。

「ゆうべここに泊ったのは誰と誰だ。隠さずに言え」

「親方が店へ泊った外は、皆んなここに居ましたよ」

「お秀はどこへ寝る」

「梯子段の下へ、――三人のお茶汲みといっしょに寝ますよ」

下女の口は思いの外滑らかに動きます。

「二階は?」

「相吉さんと弁次郎さんが、夜更けまでベチャベチャ話しているんで、姐さんに小言を言われていました」

「お秀は下から怒鳴ったんだな」

「ヘエ――」

「二人とも一と晩中どこへも出ないだろうな」