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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens
「出られるわけはありませんよ、梯子段は一つだし、格子は釘付けだし」
下女は思いの外気が廻ります。
「二階を見せてくれ」
「ヘエ――」
十手を見せられると、文句はありません。平次は呆気に取られている下女を尻目に二階へ上がりましたが、屋根は真新しく、格子は厳重な釘付けで、梯子より外には外へ出る道があろうとも思われません。押入から二人の持物を引出して見ましたが、よくよく困っていると見えて銭も金も百もない有様。血刀などはもとより隠してあるはずもなく、何もかも平次の予想を裏切ってしまいました。
「相吉と弁次郎は、二人とも昨夜飯を食ったかい?」
「いえ、弁次郎さんは、お腹の加減が悪いとか言って、二階から降りて来たのは相吉さん一人でしたよ」
「朝飯は? ――それも相吉一人か」
「いえ、弁次郎さんも今朝は降りて来ました。まだあんまり食が進まない様子でしたが」
「二人は金づかいはどうだ」
「二人ともまだ若いんですもの」
「借金は?」
「私からまで借りるくらいですから――」
この下女には、相吉と弁次郎を顎で使いそうなところがあります。
「二人は脇差を持っているかい」
「相吉さんが持っていますよ」