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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,130 characters · 288 screens

Aozora Bunko

「へッ、冗談でしょう。全く良い女ですぜ、親分。半歳ばかり前に、幾太郎が根引いて、囲ったまままだ金蔓も手も切れていないんだそうで、一生懸命幾太郎を庇っていましたよ」

「で、ゆうべ幾太郎は何刻に行ったんだ」

「宵のうちに来て、暁方は帰ったがまた戻って来たというから変じゃありませんか」

「フーム」

「その上、お艶に駆落をすすめたそうですよ」

「お艶は幾太郎を庇いながらそんな事をペラペラ饒舌るのか」

「ヘエ――」

「薄情な女だな。それに比べると、物を言わないお桃の方がよっぽど実があるぜ」

「…………」

「打ち殺してもやりたいほど幾太郎に未練があるんだ」

「すると?」

ガラッ八はゴクリと固唾を呑みました。

「あわてるな、お桃が下手人だとは言わないぜ」

「親分」

「俺の見当じゃ、囲いの中の玉が入れ変っているとも知らずに、幾太郎を殺すつもりで、梅吉を殺したに違えねえと思うんだ」

「じゃ、やはり、幾太郎が下手人じゃないと言うんでしょう」

「幾太郎が下手人だった日にゃ、自分が自分を殺した下手人だって事になるよ」

「本当ですか、親分」

「幾太郎は梅吉に身代りを頼んで、夜中手洗に行く親父の眼を誤魔化し、そっと抜け出してお艶に逢いに行ったんだろうよ。