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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十)金色の処女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 137,868 characters · 278 screens
「そのうちでも、諦めたのと、諦め切れないのとあるだろう」
「お袖や、お舟は諦められない口です」
「それから」
「娘を追い廻していたのでは、お袖の兄の勘三郎という野郎があります。あの野郎なら殺し兼ねません。恐ろしく無法な奴で――」
文吉の呪いは果てしもありません。
平次はお曾与の枕元に線香を上げて、そこそこに不快な空気から遁れ出ました。
その次に訪ねたのは、小唄の師匠のお舟、何とかいう名取りですが、昔から知っている平次には、ただの新造のお舟のような気がしてなりません。もう二十七八にもなるでしょうが、若くて、粋で、美しくて、何となく心ひかれる含蓄があります。
こんな透き徹るような感じの女が、どう間違って伊丹屋の駒次郎などの思い者になっていたことか、平次には不思議でなりません。
「あら、銭形の親分さん」
お舟は屈託のない様子で迎えました。
「お舟、お曾与が殺されたことは聞いたはずだな」
こう言う平次は、自分ながら職業的な嫌味を自分に感じておりました。
「え、お気の毒ねエ」
「お前もそう思うか」
「まア」
「お曾与には怨みがあったんじゃないか」
「とんでもない。伊丹屋の若旦那と手が切れて、私はせいせいしていますよ」