Japanische Klassiker mit Furigana
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ロザリオのくさり
ロザリオの鎖
永井 隆
Lesen Sie ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) von 永井 隆 (ながいたかし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.351 Zeichen · 213 Bildschirme
私はポケットから桃のかんづめを取り出した。家の焼け跡の防空ごうから掘り出した非常時食糧の一つであった。かんを切りあけ、誠一に竹ばしを持って来させ、カヤノと二人の前へ、「さあ、おあがり──うまいぞ」と、かんのまま押し出した。
ところが二人の子供はもじもじして私の顔と竹ばしの突き立ったかんづめとを見くらべるばかりで、手も出さなければ、にこりともしない。せっかく喜ばしてやろうと思って、重いのに持って来てやったものを──私はいらだってきた。
「さっさと食ったらどうか」
私の鋭い声に、二人の幼い子はびくっとし、べそをかき始めた。……私はじいっと、それを見つめていた。胸の中はにえたぎるようだった。
そうだ。この子は母の現われてくるのを待っているのだ。──このかんづめが防空ごうの中にあった物とは誠一は知っていた。空襲がはげしくなったころのある晩、これはおいしいから皆で食べようね、と母が言いながら非常箱に詰めた桃のかんづめだったのだ。……その桃のかんづめは今目の前にあるのに、お母さんだけがなぜ……? お母さんがいたら──このかんづめだって、こんなふうに殺風景に竹ばしを四本突っこんで、さあ食べろ、などとは言わない……。