Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
それをまるで期待しているわけなの」
「…………」
直子は、そういうところへくると、伸子の心持が見当つかないらしかった。彼女は溜息をついてぼんやり頷いた。
「でも、なぜ私のところへ、こうやって、佃さんは駄目だって云う方ばかり、きて下さるんでしょう……あのひとの方も、こんななのかしら」
伸子は呟いた。
直子はやがて、自分の云うだけのことは云ったという実際家らしさで、袋や手套をかきよせた。
「とにかく、私いつかっから、思っていたことを聞いていただいて、さっぱりしたわ。用いて下さろうと下さるまいと、やはり申してしまわないうちはね」
直子は片手の手套をはめ終ると、
「とんだお邪魔を致しました。ではまたいずれね」
と、伸子の手をとった。
「そう?」
伸子は、何だか変で、間の抜けた返事をした。直子は、しゃんしゃんした足どりで廊下へ出た。
「左様なら」
「さようなら」
直子は、自分の良心的任務を果した、という信念にみちている風で、右手に袋を抱え、左手を振って、廊下を遠のいて行く。――角を曲るまでその後姿を見送って、扉をしめると同時に、伸子は、何ということなく、力無い歪んだ微笑を口のあたりに浮べた。