Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

「放って置いていいのよ、そんなことは。本当に必要なら、誰かにさせればいいんですもの」

「――したっていいでしょう? 少しでも皆のためになれば結構だもの」

「――気晴しになさるんならいいけれど……」

伸子は、梳きかけの髪を片手に握った、そのかげから佃を見た。彼はぴたりと本棚に向って板の間に胡坐を組み、もう戸をあけて、塵だらけの古雑誌を引出しては分類しだした。その後つきに、彼の心持を察するに馴れた伸子の眼を、捕えて離さないあるものがあった。危く、

「不機嫌?」

と訊きかけた。が、やめた。若し彼が不機嫌だとしたら、自分は友塚へ行くのを中止にするだろうか? 否。鏡の前に戻りながら、伸子は、いつの間にかこういう風に働くようになった自分の感情を省みて、憫笑した。――鏡の面に顔を近づけて白粉をつけている伸子の頭のうちを、考えが静かに重く進行した。そして、伸子は、こういう一見けちな簡単そうな心の煩いで、自分だけでない、結婚している多くの女が、気を重くされ、不活溌になっているのを感じた。

支度ができ上ると、伸子は自分で自分の気を引き立て、気軽く彼に、

「行って参ります」

と挨拶した。